薬膳の食事とは?食材の効能と味を活かす簡単料理レシピを紹介
薬膳と聞くと、特別な生薬を使った専門的な料理を想像するかもしれません。
しかし、薬膳食事は本来、体調や季節に合わせて身近な食材を選び、組み合わせることで心身のバランスを整える健康法です。
この記事では、薬膳の基本的な考え方から、スーパーで手軽に手に入る食材を使った人気の簡単レシピまで、初心者にも分かりやすく解説します。
薬膳食事とは?体調に合わせて食材を選ぶ健康法
薬膳食事とは、中医学の理論に基づいて、個々の体質や体調、季節の変化に合わせて食材を組み合わせる「食養生」のことです。
病気の治療が目的ではなく、日々の食事によって体の内側からバランスを整え、健康を維持することを目指します。
特別な薬膳の食材や高価な食品だけを使うのではなく、普段私たちが口にしている野菜や肉、魚などの性質を理解し、その効能を活かすことが基本となります。
目的は体の中から不調を整えること
薬膳食事の主な目的は、病気を治すことではなく、体の偏りを正常な状態に戻し、不調を未然に防ぐことにあります。
中医学では、心と体は一体であり、全体のバランスが崩れると、さまざまな不調が現れると考えられています。
例えば、目の疲れやかすみ、胃のもたれや食欲不振、のどの痛みといった日常的な悩みも、体のバランスの乱れが原因の一つと捉えられます。
薬膳では、それぞれの食材が持つ力を利用して、体に不足しているものを補い、余分なものを取り除くことで、こうした不調を内側から穏やかに整えていきます。
特別な生薬は不要!スーパーの食材で実践できる
薬膳というと、漢方薬のような特殊な生薬を使わなければならないというイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはありません。
薬膳の基本は、日常的にスーパーマーケットで手に入る身近な食材を活用することです。
例えば、ねぎやしょうが、大根といった野菜も、それぞれが持つ効能を理解すれば立派な薬膳食材となります。
普段私たちが食べている和食の定食も、食材の組み合わせや季節感を意識するだけで、立派な薬膳ごはんに変わります。
大切なのは、365日の食事の中で、自分の体調に合った食材を意識して選ぶことです。
薬膳の基本となる考え方を知ろう
薬膳を日々の食事に取り入れるためには、いくつかの基本的な考え方を知っておくと、より効果的に食材を選べるようになります。
ここでは、食材の性質を分類する「五性」、味の働きを示す「五味」、そして自然界と体の関係を表す「五行説」という、薬膳の根幹をなす3つの理論について解説します。
これらの知識は、体調や季節に合わせた食事作りの指針となります。
食材が持つ体を温める・冷やす性質「五性」
五性とは、食材が人の体に入ったときに「温める」か「冷やす」かという性質を5段階で示したものです。
具体的には、体を強く温める「熱性」、穏やかに温める「温性」、体を冷やす「涼性」、強く冷やす「寒性」、そしてどちらでもない「平性」に分けられます。
例えば、しょうがやねぎは体を温める食材の代表格です。
一方で、きゅうりやトマトは体を冷やす性質を持ちます。
多くの食材は平性に分類され、日常的に食べやすいのが特徴です。
自分の体質が冷えやすいのか、逆に熱がこもりやすいのかを把握し、季節の変化も考慮しながら、五性のバランスを考えて食材を選ぶことが基本です。
温める食材と冷やす食材を組み合わせ、平性の食材を中心に食事を組み立てます。
5つの味付けで内臓の働きを助ける「五味」
五味とは、食材がもつ5種類の味(酸・苦・甘・辛・鹹)と、それが体のどの部分(五臓)に働きかけるかを示した考え方です。
酸味は肝、苦味は心、甘味は脾(胃腸)、辛味は肺、鹹味(塩辛い味)は腎に作用するとされています。
例えば、酸味のある酢の物などは、ストレスで疲れた肝の働きを和らげるといった具合です。
これらの5つの味をバランス良く食事に取り入れることで、内臓全体の働きを整えることにつながります。
これは単なる味付けの話ではなく、食材そのものが本来もつ味を指します。
五味を意識することで、体に必要な栄養素を偏りなく摂取し、体の調和を保つことができます。
季節と体の調和を目指す「五行説」
五行説は、自然界のすべてのものを「木・火・土・金・水」の5つの要素に分類し、それらの相互関係で世界の成り立ちを説明する古代中国の思想です。
この考え方は薬膳にも応用され、季節、方角、色、味覚、そして体の臓器がそれぞれ対応付けられています。
例えば、春は「木」、夏は「火」、秋は「金」、冬は「水」に対応し、季節の変わり目である梅雨の時期などは「土」と関連付けられます。
季節ごとに体調は変化しやすいため、その季節に対応する食材を摂ることで、自然との調和を図り、体のバランスを整えるのです。
例えば、湿気が多い梅雨には、体の余分な水分を排出するお茶や豆類を取り入れるといった工夫が考えられます。
【お悩み別】体調を整える薬膳食材の選び方
薬膳の基本的な考え方を理解したら、次はいよいよ実践です。
ここでは「冷え」「むくみ」「疲れ」という、多くの人が抱えがちな3つの悩みを取り上げ、それぞれの症状を和らげるのに役立つ食材の選び方を具体的に紹介します。
日々の体調に合わせて食材を選ぶことで、毎日の食事がセルフケアの時間に変わります。
毎日のメニュー作りの参考にしてください。
冷えが気になるなら体を温める食材をプラス
手足の先が冷たい、体が温まりにくいといった冷えの悩みには、体を内側から温める「温性」や「熱性」の食材を積極的に取り入れるのがおすすめです。
代表的な食材には、羊肉や鶏肉、えび、ニラ、かぼちゃ、ねぎ、しょうが、にんにくなどが挙げられます。
これらの食材を使った鍋料理は、体を効率よく温めるのに適したメニューです。
また、シナモンや唐辛子、山椒といったスパイス類も血行を促進し、体を温める働きがあります。
調理法も、生で食べるよりは加熱調理を選ぶのが基本です。
体を冷やす性質のある生野菜や冷たい飲み物はなるべく避け、温かいスープや飲み物を食事にプラスするよう心がけましょう。
むくみが気になるなら水分バランスを整える食材を
顔や足がむくみやすいと感じる場合、体内の水分代謝が滞っている可能性があります。
薬膳では、体の余分な水分を排出し、水の巡りを良くする「利水作用」のある食材を選びます。
代表的なのは、小豆や黒豆といった豆類、とうもろこし、ハトムギ、きゅうり、冬瓜などです。
これらの食材は、体内の水分バランスを整え、むくみの原因となる余分な湿気を取り除く手助けをします。
また、昆布やわかめなどの海藻類もおすすめです。
塩分の多い食事は体内に水分を溜め込む原因になるため、味付けは薄味を基本とし、これらの食材をスープや煮物、お茶などで日常的に取り入れると良いでしょう。
疲れやすいならエネルギーを補う食材を取り入れる
なんとなく体がだるい、気力が出ないといった疲れを感じるときは、生命活動のエネルギー源である「気」が不足している状態と考えられます。
気を補うためには、胃腸の働きを助け、栄養を効率よくエネルギーに変えられる食材が重要です。
具体的には、うるち米やもち米、じゃがいも、山芋、鶏肉、たら、たこなどが挙げられます。
これらはエネルギーを補給し、体力をつけるのに役立ちます。
また、かぼちゃやきのこ類、豆腐や湯葉などの大豆製品、ヨーグルトなども胃腸に優しく、気の生成をサポートします。
十分な睡眠とともに、これらの食材をバランス良く食事に取り入れ、エネルギーをしっかりと補給することが大切です。
初心者でも簡単!今日から作れる薬膳料理レシピ3選
薬膳の理論を学んでも、実際の料理が難しければ長続きしません。
しかし、薬膳料理は家庭で手軽に作れるものばかりです。
ここでは、スーパーで手に入る身近な食材だけを使い、初心者でも簡単に挑戦できる薬膳レシピを3つご紹介します。
炒め物やスープなど、普段の食卓にも取り入れやすいメニューなので、まずは気軽に試してみてください。
いつものサラダに一品加えるような感覚で、薬膳を始めてみましょう。
血の巡りをサポートする「鶏肉と黒きくらげの炒め物」
血の巡りが滞ると、肩こりや肌のくすみ、生理痛などの不調につながることがあります。
このレシピは、エネルギーを補う鶏肉と、血の巡りを良くする働きを持つ黒きくらげを組み合わせた一品です。
黒きくらげは、食物繊維も豊富で、生活習慣病の予防にも役立つとされる食材です。
作り方は簡単で、鶏肉と水で戻した黒きくらげ、そして血行促進を助ける玉ねぎやピーマンなどの野菜を一緒に炒め合わせるだけ。
ごま油で炒めれば、さらに体を温める効果が期待できます。
手早く作れて栄養バランスも良く、日々の食卓に取り入れやすいのが魅力です。
胃腸の働きを助ける「かぼちゃと長芋のポタージュ」
胃腸が疲れている時や食欲がない時には、消化が良く、栄養豊富なポタージュがおすすめです。
かぼちゃは体を温めながら胃腸の働きを整え、長芋は滋養強壮に優れ、消化を助ける作用があります。
この二つを組み合わせることで、優しく胃腸を労わる一品になります。
作り方は、かぼちゃと長芋を柔らかく煮て、ミキサーにかけるだけ。
牛乳や豆乳で伸ばし、塩で味を調えます。
豆腐を少し加えて作ると、より滑らかでクリーミーな仕上がりです。
自然な甘みで心も体も温まる、食べやすいスープです。
体の潤いを補う「豚肉と白菜の重ね蒸し」
空気が乾燥する季節や、肌のかさつき、のどの渇きが気になる時には、体に潤いを与える食材を取り入れましょう。
豚肉は体を潤し、白菜は体の余分な熱を冷ましながら水分を補給する働きがあります。
これらの食材を交互に重ねて蒸すだけの簡単な調理法で、素材の旨味を存分に味わえる一品です。
きのこ類やなすなどを一緒に蒸しても美味しくいただけます。
蒸し料理は油を使わずに済むためヘルシーで、胃腸への負担も少ないのが特徴です。
ポン酢やごまだれなど、好みのたれでさっぱりと食べられます。
まとめ
薬膳食事は、専門的な知識や特別な食材がなければ実践できるものではありません。
日々の食事において、自分の体調や季節の変化に目を向け、食材の持つ性質を少しだけ意識することから始まります。
体を温める性質、冷やす性質を持つ「五性」や、内臓の働きを助ける「五味」といった基本的な考え方を参考に、スーパーで手に入る身近な食材を組み合わせてみましょう。
まずは一つの不調に対して、おすすめの食材を一つ取り入れてみることから始まり、無理のない範囲で続けていくことが、健やかな体づくりにつながります。
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