頭痛と吐き気の原因は?ストレス・生理前から危険な脳の病気と対処法
頭痛と吐き気は多くの人が経験する症状ですが、その原因は多岐にわたります。
ストレスや疲労、生理前、妊娠初期といった日常的な要因から起こる場合もあれば、命に関わる脳の病気が隠れているサインかもしれません。
特に40歳を過ぎると、脳卒中などのリスクも考慮する必要があります。
気持ち悪いと感じる不快な症状が続く場合、その背景にある原因を正しく理解し、適切な対処法をとることが重要です。
この記事では、頭痛と吐き気を引き起こす様々な原因、危険な症状の見分け方、そして自分でできる対処法について解説します。
なぜ頭痛と吐き気は一緒に起こるのか?脳からのサインを解説
頭痛と吐き気が同時に起こるのには明確な理由があります。
例えば片頭痛では、脳の血管が拡張し、三叉神経という神経が刺激されます。
この刺激が脳幹にある嘔吐中枢にも伝わるため、吐き気や気持ち悪いという感覚を引き起こします。
また、くも膜下出血や脳腫瘍などによって頭蓋骨の中の圧力(脳圧)が高まると、嘔吐中枢が直接圧迫されて刺激され、強い吐き気や嘔吐が生じます。
このように、頭痛を伴う吐き気は、脳内で何らかの異常が起きていることを示す重要なサインである可能性があります。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ行くべき危険なサイン
いつもと違う頭痛や、経験したことのないような急な吐き気には注意が必要です。
特に、突然始まった激しい頭痛や、数日間にわたって症状が続く場合は、単なる体調不良ではなく、危険な病気の前触れかもしれません。
これから紹介するような症状は、脳の深刻な病気を示唆している可能性があります。
急な症状や、普段とは明らかに違うと感じる不調が現れた場合は、自己判断で様子を見ずに、速やかに医療機関を受診することを検討してください。
突然バットで殴られたような激しい頭痛
突然、後頭部をバットで殴られたようなと表現される、これまでに経験したことのないほどの強い頭痛は、くも膜下出血を強く疑うべき危険なサインです。
この突然の激痛は、脳動脈瘤の破裂によって、脳を覆うくも膜の下に出血が広がることで発生します。
多くの場合、激しい吐き気や嘔吐、意識障害を伴い、命に直接関わる極めて危険な状態です。
発症後は再出血のリスクも高く、一刻を争うため、少しでもこのような症状に心当たりがあれば、ためらわずに救急車を呼び、専門的な治療を受ける必要があります。
ろれつが回らない、手足のしびれがある
頭痛や吐き気に加えて、呂律が回らない、言葉がうまく出てこない、片方の手足にしびれや麻痺を感じるといった症状は、脳梗塞や脳出血といった脳卒中の可能性があります。
これらの症状は、脳の血管が詰まったり破れたりすることで脳細胞がダメージを受け、体の特定の機能をコントロールできなくなるために起こります。
その他にも、物が二重に見える、まっすぐ歩けないほどのふらつき、体の片側だけの痙攣や震えなども重要なサインです。
脳の障害は治療開始までの時間がその後の回復を大きく左右するため、直ちに専門の医療機関を受診しなくてはなりません。
高熱や首の硬直を伴っている
激しい頭痛と吐き気に、38度以上の発熱や寒気を伴う場合、髄膜炎の可能性を考慮する必要があります。
髄膜炎は、脳と脊髄を覆う髄膜に細菌やウイルスが感染して炎症を起こす病気です。
特に重要なサインとして、首の後ろが硬くなり、前屈させようとすると強い痛みを感じる「項部硬直」があります。
初期症状がインフルエンザなどの風邪に似ているため見過ごされやすいですが、治療が遅れると重篤な後遺症を残すことや、命に関わることもあるため注意が必要です。
発熱を伴う頭痛に首の痛みが加わった際は、速やかに医療機関へ相談してください。
吐き気を伴う頭痛から考えられる命に関わる病気
吐き気や嘔吐を伴う頭痛は、生命を脅かす病気が原因である可能性を常に念頭に置くべきです。
特に、高血圧の持病がある人は、血圧の急激な変動が脳卒中の引き金となることがあり、注意が必要です。
一度だけでなく何度も吐いた、意識が朦朧としてきた、といった症状は、脳内で深刻な事態が起きているサインかもしれません。
これから、吐き気を伴う頭痛から考えられる代表的な病気について解説します。
これらの病気は、いずれも迅速な対応が求められます。
くも膜下出血
くも膜下出血は、脳を覆う膜の一つである「くも膜」の下で、脳動脈瘤などが破裂して出血が起こる病気です。
突然の激しい頭痛、吐き気、嘔吐が主な症状で、意識を失うことも少なくありません。
この頭痛は「人生最悪の頭痛」と表現されるほど強烈で、後頭部から首にかけての痛みを訴えるケースが多く見られます。
発症すると極めて危険な状態に陥り、迅速な診断と外科的治療が不可欠です。
出血量が多い場合や再出血を起こした場合、命を落とす危険性や重い後遺症が残る可能性が非常に高まります。
脳出血・脳梗塞
脳出血は脳内の血管が破れる病気、脳梗塞は脳の血管が詰まる病気で、どちらも脳卒中に含まれます。
高血圧が主な危険因子となり、頭痛や吐き気を伴うことがあります。
脳出血では、出血した場所の脳細胞が破壊され、頭蓋内圧が上昇することで激しい頭痛や嘔吐、意識障害を引き起こします。
一方、脳梗塞でも頭痛は起こりえますが、どちらかというと体の片側の麻痺やしびれ、呂律障害といった神経症状が特徴的です。
これらの症状は突然現れることが多く、発症後の数時間が治療の鍵を握るため、疑わしい場合は直ちに専門医のいる病院へ向かうべきです。
髄膜炎
髄膜炎は、ウイルスや細菌が脳や脊髄を覆う髄膜に感染し、炎症を引き起こす病気です。
インフルエンザやコロナウイルス感染、あるいは咳や喉の痛みを伴う風邪のような症状に続いて発症することもあります。
主な症状は、激しい頭痛、吐き気や嘔吐、高熱、そして首が硬直して前に曲げにくくなる項部硬直です。
細菌性の髄膜炎は特に進行が速く、治療が遅れると命に関わるほか、聴力障害などの後遺症が残るリスクがあります。
風邪だと思っていても、これまでにない頭痛や首の硬さを感じた場合は、髄膜炎を疑い受診する必要があります。
脳腫瘍
脳腫瘍は、頭蓋内に発生する腫瘍の総称で、悪性(がん)と良性があります。
腫瘍が徐々に大きくなるにつれて頭蓋内の圧力が上昇し、慢性的な頭痛や吐き気の原因となることがあります。
特に、起床時に症状が強い「モーニングヘッドエイク」が特徴的なサインの一つです。
脳腫瘍の症状の進行速度は、腫瘍の種類や悪性度によって大きく異なり、頭痛のほか、けいれん発作(てんかん)、手足の麻痺、視力障害、言葉の障害など、腫瘍が発生した場所に応じた多様な症状が現れます。
頭痛が日を追うごとに強くなる、薬が効かなくなってきたなどの変化があれば、脳神経外科などの専門医に相談することが勧められます。
日常生活に潜む頭痛と吐き気の原因
頭痛と吐き気は、命に関わる病気だけでなく、私たちの日常生活の中に潜む様々な要因によっても引き起こされます。
これらの多くは慢性的な頭痛であり、生命に直接の危険はないものの、めまいや倦怠感、時には下痢などの不調を伴い、生活の質を著しく低下させます。
ストレス、睡眠不足、食生活、天候の変化など、人によって原因は様々です。
自分の頭痛がどのような状況で起こりやすいかを知り、適切に対処していくことが、つらい症状と上手に付き合うための第一歩となります。
ズキンズキンと脈打つような「片頭痛」
片頭痛は、こめかみを中心に、脈拍に合わせてズキンズキンと痛むのが特徴的な頭痛です。
頭の片側が痛むことが多いことから「偏頭痛」とも呼ばれますが、両側が痛むケースもあります。
この痛みは体を動かすと悪化し、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
また、吐き気や嘔吐を伴うことが多く、普段は気にならない光や音、匂いに対して過敏になるのも特徴の一つです。
ストレス、寝不足、特定の食品、気圧の変化などが引き金となることが知られており、自身の誘因を把握して避けることが予防につながります。
ストレスや疲労が引き起こす緊張型頭痛
緊張型頭痛は、数ある慢性頭痛の中でも最も一般的なタイプです。
頭の周りを何かで締め付けられるような、あるいは圧迫されるような鈍い痛みがだらだらと続くのが特徴です。
長時間のデスクワークなど、同じ姿勢を続けることによる身体的なストレスや、精神的な緊張、疲労、睡眠不足が主な原因とされています。
これらの要因によって首や肩、背中の筋肉が過度に緊張し、血流が悪くなることで痛みが発生します。
片頭痛ほど強い吐き気を伴うことは稀ですが、ふわふわとしためまい感や倦怠感を覚えることもあります。
女性に多い月経(生理)周期に伴う不調
女性の場合、月経(生理)周期に伴う女性ホルモンの変動が頭痛と吐き気の大きな原因となることがあります。
特に生理前や生理中には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンの分泌量が急激に低下します。
この変化が脳内の血管の収縮や拡張に影響を与え、片頭痛に似たズキンズキンとした頭痛を引き起こすのです。
これは「月経関連片頭痛」と呼ばれ、通常の片頭痛よりも症状が強く出やすい傾向にあります。
また、月経前症候群(PMS)の一環として、頭痛や吐き気のほかに腹痛や気分の落ち込みなど、心身の様々な不調が現れることもあります。
つらい症状を和らげるために自分でできる応急処置
急な頭痛と吐き気に襲われた際、すぐに医療機関に行けない状況でも、症状を少しでも和らげるために自分でできる対処法があります。
ただし、これらはあくまで一時的な応急処置です。
激しい運動やお酒の摂取は血管を拡張させて痛みを増強させるため、症状があるときは避けるべきです。
また、カフェインの摂りすぎや、空腹による低血糖も頭痛を誘発する一因になり得ます。
これから紹介する方法を試しても症状が改善しない、あるいは悪化する場合には、医療機関の受診を検討してください。
まずは暗く静かな場所で安静にする
特に片頭痛の症状が出ているときは、光や音、匂いといった外部からの刺激に非常に敏感になります。
これらの刺激は頭痛をさらに悪化させる原因となるため、症状を感じたら、まずは照明を落とした静かな部屋で横になり、目を閉じて休むことが有効です。
テレビやスマートフォンの画面から発せられる光も刺激になるため、使用を控えるのが望ましいです。
緊張型頭痛の場合は、安静にすることに加えて、首や肩を温めたり、軽いストレッチを行ったりすると筋肉の緊張がほぐれて症状が和らぐこともあります。
どちらの頭痛か分からなくても、無理せず体を休めることが基本の対処法です。
脱水を防ぐために水分を少しずつ補給する
嘔吐を伴う場合、体から多くの水分と電解質が失われ、脱水状態に陥りやすくなります。
脱水はそれ自体が頭痛の原因にもなるため、症状を悪化させないためにも水分補給は非常に重要です。
ただし、吐き気があるときに一度にたくさんの水分を摂ると、かえって胃を刺激して嘔吐を誘発することがあります。
そのため、常温に戻したスポーツドリンクや経口補水液などを、スプーンで一杯ずつ、あるいは一口ずつ、ゆっくりと時間をかけて摂取する方法が推奨されます。
嘔吐が激しく、全く水分を受け付けない場合は、医療機関での点滴が必要になることもあります。
市販の鎮痛薬を服用する際の注意点
市販の鎮痛薬は、つらい頭痛を和らげるための有効な手段です。
特に片頭痛は、痛みが出始めたごく初期の段階で薬を服用すると高い効果が期待できます。
しかし、市販薬の使用には注意も必要です。
月に10日以上の頻度で鎮痛薬を服用し続けると、かえって薬そのものが頭痛を引き起こす「薬剤の使用過多による頭痛」を招くことがあります。
この状態になると、薬が効きにくくなり、さらに薬の量や頻度が増えるという悪循環に陥りかねません。
市販薬を飲んでも痛みが治まらない、または飲む回数が増えてきたと感じる場合は、自己判断を続けずに専門医に相談すべきです。
頭痛と吐き気があるときは何科を受診すべき?
頭痛と吐き気の症状で何科を受診すれば良いか迷った場合、まずは症状の性質によって判断します。
これまでに経験したことのない突然の激しい頭痛、手足の麻痺やしびれ、呂律が回らないといった症状がある場合は、脳卒中などの緊急性の高い病気が疑われるため、迷わず救急車を呼ぶか、脳神経外科や神経内科のある救急病院を受診する必要があります。
一方で、以前から同じような頭痛を繰り返している慢性的な症状の場合は、頭痛外来や脳神経外科、神経内科が専門となります。
どこに相談すればよいか分からない場合は、まずかかりつけの内科医に相談し、適切な診療科を紹介してもらうのも良い方法です。
まとめ
頭痛と吐き気は、風邪のような身近な不調から、ストレスや生理周期、さらにはくも膜下出血や脳腫瘍といった命に関わる病気まで、非常に多様な原因によって引き起こされます。
特に、「突然の激しい痛み」「手足のしびれ」「高熱や首の硬直」といった症状を伴う場合は、危険な病気のサインである可能性を考えなくてはなりません。
慢性的な頭痛であっても、生活の質を大きく損なうため、市販薬に頼りすぎずに一度専門医に相談することが望ましいです。
つらい症状があるときは無理をせず、暗く静かな場所で安静にし、こまめな水分補給を心がけるといった対処も有効です。
少しでも「いつもと違う」と感じたら、ためらわずに医療機関を受診してください。
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