ヘルスケア

メンタルヘルス面談の進め方と注意点|産業医連携と法的義務も解説

メンタルヘルス面談の進め方と注意点|産業医連携と法的義務も解説

従業員のメンタルヘルスケアは、現代の企業にとって重要な経営課題です。
特に、不調の兆候が見られる従業員への対応の第一歩となるのが「メンタルヘルス面談」です。
この記事では、企業の担当者が知っておくべき面談の目的や法的義務、具体的な進め方、注意点を解説します。

また、面談を効果的に進める上で欠かせない産業医との連携方法についても触れ、企業の適切な対応を支援します。

企業に求められるメンタルヘルス面談とは?法的義務と目的を解説

企業におけるメンタルヘルス面談とは、従業員の心の健康状態を把握し、不調の早期発見と適切なケアにつなげるために行われる面談です。
労働契約法や労働安全衛生法により、企業には従業員の心身の安全を確保する「安全配慮義務」が課せられています。
この義務を果たす上で、面談は中心的な役割を担います。

その主な目的は、従業員が抱える悩みやストレス要因を明らかにし、業務の調整や専門家への相談といった具体的な支援策を講じることです。

メンタルヘルス面談が必要となる主な3つのケース

企業がメンタルヘルス面談を実施すべき場面は、主に3つのケースに分類されます。

労働安全衛生法に基づき、企業に実施が義務付けられている「ストレスチェック後の高ストレス者」と「長時間労働者」への医師による面接指導が代表的です。

これらに加え、法律上の義務ではないものの、従業員本人からの申し出や上司が不調を察知した場合にも、企業の安全配慮義務の観点から面談の実施が強く推奨されます。

【義務】ストレスチェックで「高ストレス」と判定された従業員

労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年に1回のストレスチェックが義務付けられています。

この検査結果で「高ストレス者」と判定され、かつ本人が申し出た場合、企業は医師による面接指導を実施する義務を負います。
この面接指導は、従業員のストレス状況を専門家が評価し、必要な助言を行うことで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。
企業は、従業員が申し出をしやすい環境を整えるとともに、申し出たことを理由に不利益な取り扱いをしてはならないと定められています。

【義務】長時間労働で疲労が蓄積している従業員

時間外・休日労働時間が1ヶ月あたり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる従業員から申し出があった場合も、企業は医師による面接指導を実施しなければなりません。
これは、長時間労働が心身に与える負荷が大きく、脳・心臓疾患やメンタルヘルス不調のリスクを高めるためです。

面接指導を通じて、医師が労働者の健康状態を確認し、睡眠時間の確保や業務負荷の軽減など、具体的な指導を行います。
企業は、対象となる従業員に対して制度を周知し、申し出を促すことが求められます。

【努力義務】本人からの申し出や上司が不調を察知した従業員

法的な実施義務に該当しない場合でも、従業員本人から心身の不調について相談があったり、上司が「遅刻や欠勤が増えた」「仕事のミスが目立つ」といった様子の変化に気づいたりした際には、面談の機会を設けることが望ましいです。

これは企業の安全配慮義務を履行する観点から重要であり、努力義務とされています。

早期に状況を把握し、適切な相談窓口や専門家へ繋ぐことで、症状の悪化や長期休職、離職といった事態を防ぐ効果が期待できます。
日頃からコミュニケーションを取り、相談しやすい職場環境を整えておくことが大切です。

失敗しないメンタルヘルス面談の基本的な進め方5ステップ

メンタルヘルス面談を効果的に行うには、事前の準備から面談後のフォローまで、体系的な進め方を理解しておくことが重要です。

専門的なカウンセリングの知識がなくても、基本的なステップと傾聴の姿勢を心掛けることで、従業員が安心して話せる場を作ることが可能です。
ここでは、担当者が面談に臨む際の具体的な方法を5つのステップに分けて解説します。
この流れに沿って進めることで、面談の目的を達成しやすくなります。

ステップ1:面談の目的とプライバシー保護について事前に伝える

面談を始めるにあたり、まずその目的を明確に伝えることが重要です。
この面談は、従業員を責めたり評価したりするためではなく、あくまで現在の健康状態や職場環境について話を聞き、必要なサポートを一緒に考えるための場であることを説明します。
同時に、話された内容の守秘義務を徹底し、本人の同意なく第三者に情報が漏れることは決してないこと、そして人事評価にも一切影響しないことを約束します。

この丁寧な事前説明という方法が、従業員の警戒心を解き、安心して話せる信頼関係の第一歩となります。

ステップ2:安心して話せる静かでプライベートな環境を準備する

面談の環境設定は、従業員が本音で話せるかどうかを左右する重要な要素です。
会話の内容が外部に漏れる心配のない、静かでプライベートが確保された個室(会議室など)を準備します。
周囲の雑音や人の出入りがあると、従業員は話に集中できず、デリケートな内容を打ち明けにくくなります。

オンラインで面談を行う場合も同様で、双方ともに自宅の個室など、プライバシーが守られる環境を確保する方法を徹底します。
物理的な安心感を担保することが、心理的な安全性の確保に直結します。

ステップ3:「傾聴」を基本に本人の話に真摯に耳を傾ける

面談中は、アドバイスや意見を述べるのではなく、まず相手の話をじっくりと聞く「傾聴」の姿勢に徹します。
これは専門的なカウンセリングでも基本となる重要なスキルです。
相手の発言を遮らず、相槌やうなずきを交えながら、従業員が自分のペースで話せるように促します。

「大変でしたね」「そう感じていたのですね」といった共感的な言葉を使い、相手の気持ちを受け止めていることを示します。
担当者の役割は問題を解決することではなく、まず本人が抱えていることを全て話し切れるよう、真摯に耳を傾けることです。

ステップ4:客観的な事実確認と本人の気持ちを整理する

従業員の話を十分に聞いた上で、状況を整理するために客観的な事実を確認していきます。
例えば、「いつ頃からそのように感じるようになりましたか」「何かきっかけになった出来事はありますか」といった具体的な質問項目を用いて、話の内容を掘り下げます。

ここでは、勤怠状況や業務内容の変化などの事実情報と、それに対して本人がどう感じているかという気持ちの部分を分けて整理するよう心掛けます。
これにより、問題の所在が明確になり、本人も自身の状況を客観的に捉え直すきっかけとなります。

ステップ5:今後の対応策を一緒に考え、必要に応じて専門家へ繋ぐ

面談の最後には、今後の対応について本人と話し合います。
会社として提供できるサポート(業務量の調整、配置転換、時短勤務など)の選択肢を具体的に提示し、本人の意向を確認します。
ただし、解決策を押し付けるのではなく、あくまで「一緒に考える」というスタンスを保つことが重要です。

本人の状態によっては、人事や上司だけでの対応が難しい場合もあります。
その際は、産業医や外部のカウンセリング機関など、専門家への相談を提案し、本人の同意を得て次のステップへ繋ぐ役割を担います。

メンタルヘルス面談で担当者が押さえるべき7つの注意点

メンタルヘルス面談は、従業員の繊細な心情に触れるため、担当者の言動には細心の注意が求められます。
良かれと思ってかけた言葉が、かえって相手を傷つけたり、不信感を抱かせたりするリスクがあります。

ここでは、面談担当者が必ず押さえておくべき7つの注意点を解説します。
これらのポイントを意識することで、不適切な対応を避け、従業員との信頼関係を維持しながら面談を進めることができます。

自分の価値観で安易にアドバイスや励ましをしない

担当者が陥りがちな失敗の一つが、自身の経験則や価値観に基づいた安易なアドバイスです。
「自分も昔はそうだった」「もっとポジティブに考えればいい」といった発言は、相手の状況を軽視していると受け取られかねません。

また、「頑張れ」「しっかりしろ」といった励ましの言葉も、すでに精一杯努力している本人にとっては大きなプレッシャーとなり、逆効果になることがあります。
重要な注意点として、アドバイスではなく、まずは本人の辛い気持ちに寄り添い、共感する姿勢を徹底することが求められます。

憶測で不調の原因を決めつけたり、本人を問い詰めたりしない

従業員の不調の背景には、仕事、家庭、プライベートなど、様々な要因が複雑に絡み合っている可能性があります。
「最近のプロジェクトが大変だったからだろう」「プライベートで何かあったのか」など、担当者が憶測で原因を決めつけるような発言は厳禁です。

また、本人が話したくない様子を見せている事柄について、無理に聞き出そうと問い詰める行為は、信頼関係を著しく損ないます。
あくまで本人が話す事実だけを受け止め、深追いしないことが重要な注意点です。

「うつ病では?」といった診断に繋がる発言は避ける

従業員の様子から特定の病名を想起したとしても、「もしかして、うつ病ではないか」といった診断めいた発言をすることは絶対にしてはいけません。
病気の診断は医師のみに許された医療行為であり、人事担当者や管理職が軽々しく口にすべきことではありません。

こうした発言は本人に不要な不安や偏見を与えるだけでなく、万が一診断が間違っていた場合に企業の責任問題に発展するリスクも伴います。
あくまで症状や状態を聞き取り、必要であれば専門の医療機関への受診を促すに留めるべきです。

面談内容の守秘義務を徹底し、プライバシーを保護する

メンタルヘルスに関する情報は、個人情報の中でも特に配慮が必要な「要配慮個人情報」に該当します。
面談で知り得た内容は、本人の明確な同意なくして、直属の上司や他の従業員に漏らしてはならないという注意点を肝に銘じる必要があります。

情報が漏洩した場合、従業員は会社への信頼を失い、二度と相談してくれなくなるでしょう。
プライバシー保護の徹底は、従業員が安心して本音を話せる環境づくりの大前提であり、企業の法的責任でもあります。

人事評価に影響しないことを明確に伝える

従業員の多くは、メンタルヘルスの不調を打ち明けることで、自身のキャリアや人事評価にマイナスの影響が出るのではないかと強く懸念しています。

この不安を払拭するため、面談の冒頭で「ここでの話が、あなたの評価や昇進に不利に働くことは一切ありません」と明確に伝えることが極めて重要です。この約束がなければ、従業員は当たり障りのない話に終始し、問題の核心に触れることを避けてしまう可能性があります。安心して話せる関係性を築くための重要な注意点として、必ず実行してください。

一度の面談で全てを解決しようとせず、継続的な関わりを持つ

メンタルヘルスの問題は根深く、一度の面談で全てが解決することはまずあり得ません。
担当者は、一度で問題を解決しようと焦るのではなく、これをきっかけに継続的に関わっていくという姿勢を持つことが大切です。

面談後も「その後、調子はどうですか?」と定期的に声をかけたり、必要に応じて再度面談の機会を設けたりするなど、長期的な視点でフォローアップします。
いつでも気にかけているというメッセージを伝え続けることが、従業員の孤立を防ぎ、回復を後押しする上で重要な注意点となります。

面談記録を適切に作成し、鍵付きの場所に保管する

面談を実施した際は、その記録を適切に残しておくことが重要です。
記録には、面談日時、出席者、話し合われた内容の要点、今後の対応策などを客観的な事実に基づいて記載します。
これは、企業が安全配慮義務を履行した証跡となるだけでなく、継続的なフォローアップの際にも役立ちます。

ただし、この記録は機微な個人情報であるため、保管には厳重な注意点があります。
アクセス権限を最小限の担当者に絞り、施錠できるキャビネットやパスワードで保護された電子ファイルで管理するなど、情報漏洩対策を徹底しなければなりません。

産業医との連携がメンタルヘルス面談成功の鍵

人事担当者や管理職による面談だけでは、対応が困難なケースも少なくありません。
医学的な判断が必要な場合や、従業員が会社の人には話しにくいと感じている場合など、専門家である産業医との連携が不可欠です。

産業医は、中立的な立場から従業員の健康状態を評価し、企業と従業員の双方に専門的な助言を行います。
効果的なメンタルヘルス対策を実現するためには、産業医面談を適切に活用し、組織として対応する体制を整えることが成功の鍵となります。

専門家の視点から助言を得られる産業医面談のメリット

産業医面談の最大のメリットは、医学的知見を持つ専門家から客観的かつ具体的な助言を得られる点にあります。
従業員にとっては、会社とは独立した立場の専門家に相談できるため、安心して心身の状態を打ち明けやすいという利点があります。

一方、企業側は、従業員の健康状態が就業にどう影響するか、どのような配慮が必要かといった点について、専門的な評価を受けることができます。
これにより、勘や経験に頼るのではなく、医学的根拠に基づいた適切な就業上の措置(業務軽減や休職の判断など)を講じることが可能になります。

産業医に共有すべき情報と連携の具体的なフロー

産業医面談を効果的に実施するためには、事前の情報共有が重要です。
まず、従業員本人から産業医面談の実施と情報提供について同意を得ます。
その上で、勤怠記録、時間外労働時間、担当業務の内容、上司から見た最近の様子の変化(遅刻、ミス、コミュニケーションの状況など)といった客観的な情報を整理し、産業医に提供します。

面談後、産業医はプライバシーに配慮しつつ、就業上の措置に関する意見書を作成し企業に提出します。
企業はその意見書に基づき、本人や上司と今後の対応を協議するというのが一般的な連携フローです。

産業医面談後の「意見書」に基づいた事後措置の重要性

産業医面談後に提出される「意見書」は、従業員の健康を確保しながら働き続けるための指針となる重要な書類です。
意見書には、通常勤務の可否、勤務時間の短縮、残業の禁止、業務内容の変更、休職の必要性といった、具体的な就業上の措置に関する意見が記載されています。

企業は、この意見書の内容を最大限尊重し、衛生委員会などで審議の上、速やかに適切な事後措置を講じる必要があります。
意見書を軽視して従業員の健康状態を悪化させた場合、企業の安全配慮義務違反を問われる可能性もあるため、真摯な対応が求められます。

メンタルヘルス面談に関するよくある質問

メンタルヘルス面談を実際に運用する上では、さまざまな疑問や迷いが生じることがあります。
従業員が面談を拒否した場合の対応や、オンラインでの実施の可否、面談内容の共有範囲など、実務担当者が直面しやすい課題は少なくありません。

ここでは、メンタルヘルス面談に関して頻繁に寄せられる質問とその回答をまとめました。
これらの具体的なケースへの対応方法を理解しておくことで、より円滑で適切な面談の実施が可能になります。

Q. 従業員が面談を拒否した場合、どう対応すればよいですか?

面談の強制はできません。
まずは、面談が本人をサポートするためのものであり、人事評価とは無関係であること、プライバシーは厳守されることを丁寧に説明し、不安を取り除くことが重要です。

それでも拒否が続く場合は、無理強いせず、産業医への相談や外部相談窓口の利用など、別の選択肢があることを情報提供するに留めます。
この質問への対応で重要なのは、本人の意思を尊重する姿勢です。

Q. オンラインでのメンタルヘルス面談に効果はありますか?注意点は?

はい、効果は期待できます。
従業員が場所を選ばずに相談しやすいというメリットがあります。

一方で、非言語的な情報(表情、しぐさなど)が伝わりにくく、深い話をしにくいと感じる場合もあります。
この質問に関する注意点として、お互いにプライバシーが確保できる静かな環境を用意すること、そして安定した通信環境を確保することが挙げられます。
画面越しでも丁寧な傾聴を心掛けることが重要です。

Q. 面談内容をどこまで上司や人事に共有してよいのでしょうか?

共有範囲は、本人の明確な同意を得た上で、業務の遂行や就業上の配慮に必要な最小限の情報に限定すべきです。
病名や私生活の詳細といった機微な情報を共有する必要はありません。
「時間外労働を月20時間以内に制限する必要がある」など、具体的な配慮事項のみを伝えるのが原則です。
この質問のように共有範囲に迷う場合は、必ず本人に確認を取り、同意のない情報共有は決して行わないでください。

まとめ

メンタルヘルス面談は、従業員の心の健康を守り、組織全体の生産性を維持するために不可欠な取り組みです。
企業には、ストレスチェックや長時間労働者への面接指導といった法的義務だけでなく、従業員の不調を早期に発見し対応する安全配慮義務も課せられています。

面談を成功させるには、プライバシーが保護された環境で傾聴に徹し、安易なアドバイスや決めつけを避けるといった注意点を守ることが重要です。
また、対応が難しいケースでは、産業医と適切に連携し、専門家の意見に基づいた事後措置を講じる体制を整える必要があります。

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